井手 あぐり:モノに託された断片

モノに託された断片

キーワード

  1. 対話するための洋服
  1. 取っておく、着ない洋服
  1. 見たいものを置く

参考文献

「ちぐはぐな身体 ファッションって何?」鷲田 清一
洋服の役割を考えるヒントにと手にした本書。聞き取りの中で出てきた、学校や仕事の制服を「着くずす」ことやデニムなどのファッションアイテムを「育てる」ことを自分なりに捉えなおすための大きな助けになった。

概要

モノに溢れたとある夫婦の部屋に通ううち、いつの間にやらこの住人の語るファッション遍歴にすっかり惹きつけられていた。中学のとき眼鏡に見いだしたオリジナリティ、新しい服を試しては模索した自分らしいスタイル、そんな彼が今ファッションに求めるもの。 最初ただ雑然として見えたその部屋には、モノと思い出が地層のように積み重なっている。所狭しとしまわれた洋服や眼鏡たちからどんどん呼び起こされる思い出の断片を書き取りながら、彼の見てきた世界がそこに立ち上がってくる。 ファッションは身にまとうものではなく、こうして家の中に積んでいくためにあるのではないかとすら思えてくる。 いつしか自分もモノに囲まれるこの部屋を居心地よく感じるようになっていた。