木原 ひとみ:憑依する、森。

憑依する、森。

 
参考文献:池田善昭・福岡伸一『福岡伸一、西田哲学を読む 生命をめぐる思策の旅』明石書店
樹木は時間の流れの中に包まれていながら、樹木の年輪の中に(時間を)包んでいる。
森には生と死、動と静、混沌と秩序が同時に存在しています。二項対立になりがちな思考を保留し、あいだに浮遊しながらこの書籍と共に時間をぼんやり眺めたいと思います。
そのとき、私は、出会ってしまったのです。 白濁とした霧が世界を覆い、肌にべっとり纏わりつく生温さの中に、冷たい雨水が緑に顔に降り注ぐ、その森に。私の胸ぐらを掴み引きこむそれは一体何者なのでしょうか。 森に生きる人々と過ごし、点に、直線に、円環に、未来から過去に…膨張しつづけながら身体に流れ込む“時間なるもの“。わかろうとすればするほど、わからなさの森に迷い込みます。テトリスのような四角い時間に生きるサラリーマンの内側から、人間の身体に流れる生命時間を手に取り、歩んだ痕跡をここに残す試みです。